ZERO ZONE 人工知能は陸橋で積み木をつむデスか

パフォーマンス
タディウシュ・カントル展企画 2015年/京都芸術センター講堂

観客はまずナビゲーターの誘導によって座禅を組む。座禅を開始して数分後、心はまだ「空」には当然到達し得ない状況の中で、その状況を壊すアクシデントが起こり、夢ともとれるステージが無常に始まる。会場に配置された少し高い位置にある3つのステージに様々な苦悩を抱えた人物たちが連鎖的に登場し、自我から抜け出せずに苦しむ姿があらわに描かれていく。愛を暴力でしか確かめられない男女、業に囚われ思い通りにならない怒りを歌にして吐き出す傲慢な中年男、己にまとわりつく服を力一杯必死に破り脱ぎすてようとする若い女性、昔の恋人だったらしき男の人形を愛し続け呪い続ける狂女―――爆音と眩い光が、激しい人の情と業として撒き散らされる。これらの世俗のシャワーに触れた後、さらにもう一度観客には座禅を組んでもらい、今、目の前で見たものをまずあえてすっかり忘れ去って頂く。頭の中に残った記憶を消し去る行為の中で、観客が何を感じ、考えてしまうだろうか。自分の人生に照らし合わすのだろうか。ただシーンを反復するのか。あっさりと記憶を捨て去るのだろうか。

構成・演出:石橋義正 ビジュアルデザイン:江村耕市 装置制作:安藤英由樹 照明デザイン:藤本隆行 出演:美波(俳優)、素我螺部・藤井b泉(ダンサー)、素我螺部・宮原由紀夫(ダンサー)、皆川まゆむ(ダンサー)、山中雅博(テノール)、増田敏子(ピアノ)、天根静也(僧侶) プログラミング:小西小多郎 音響:丸山正浩、美術:池田精堂、柴田隆弘 舞台監督:浜村修司 スタイリスト:KYOKOヘアメイク:中野泰子演出補佐:粟津一郎  スチール:田中マサアキ  制作:須知聡子